いま、漢方の世界で瘀血(おけつ)が注目されている。
 瘀血とは、血液がドロドロと粘り、滞った状態を指す中国医学の専門用語である。生活習慣病といわれる肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病、痛風なども、皆この瘀血が原因となっているといっても過言ではない。
 先頃、東京・有楽町朝日スクエアで「日中瘀血シンポジウム--瘀血の料学」が第1回国際統合未来医学会学術集会のサテライトシンポジウムとして開かれた。2日間にわたって西洋医学と東洋医学の、特に中国医学との統合による新しい医療の創造を目的として開催されたもので、医師、薬剤師、針灸師、栄養士らが参加した。
 シンポジウムでは特に瘀血を改善する薬として根強い人気のある活血化瘀(かっけつかお)薬「冠元顆粒」の血栓予防作用と血栓溶解作用に注目が集まった。

細胞付着とヘモレオロジー
(血液と血管の変形と流動に関すること)
改善における冠元顆粒の作用
北京解放軍総医院・劉育英医師

図1

冠元顆粒を投与
血流は順調

冠元顆粒を投与していない
血管壁が凹凸。血栓が見られる
 内容はラットにエンドトキシンという毒性物質(微小血管の循環障害を引き起こす)を与え、その影響を見る実験。前もって10日間活血化瘀(かっけつかお)薬「冠元顆粒」を与えておくとどういう効果があるかを調べたものである。
 劉医師はその結果を以下の通り報告した。冠元顆粒は
(1)血液を固まらせる血小板同士がくっつくのを軽減
(2)血液の粘度を下げ、
(3)血栓が作られるのを抑制し、さらに
(4)内皮細胞の腫れと血管の外への出血を軽減させ、
(5)微小血管の内皮細胞の傷害を治し、
(6)赤血球の変形能力を高める
以上の作用を持っている。
 同時に、この実験の結果を特殊な装置で撮影した8分間のビデオも放映された。
 映像で見ると「百聞は一見にしかず」で非常によくわかる。冠元顆粒を投与していないラットにエンドトキシンを注入して30分もすると、血管の壁をつたい転げまわる白血球の数が徐々に増え、血管の壁への付着が見られた。1時間後、2時間後とさらに観察を続けると、血液の流れもだんだんと遅くなり、壁にくっつく白血球や赤血球などの数は明らかに増えている。4時間後では血管の壁も内皮細胞も腫れ、血管の壁の細胞と細胞のすき間が大きくなり、血液が血管の外に出て出血し、血管の壁も凸凹になり、血栓が作られる様子もはっきりと見られた(図1)。  
 これに対してあらかじめ冠元顆粒を投与したラットでは同じくエンドトキシンを注射して30分後、璧にそってローリングする白血球や赤血球の数は明らかに少ない。さらに1時間後、2時間後をみると、若干血管からの出血は見られるが、その量は少ない。  
 4時間後には、白血球の付着が増え、血管の壁も変化しているが、その程度は軽い。血管の壁も比較的滑らかで、腫れもひどくない。しかも血栓は作られておらず、冠元顆粒に血栓の形成を予防する作用があることが明らかに示された。

活血化瘀薬の血栓溶解作用についての考察
中国浙江省 浙江大学・鄭筱祥教授

 冠元顆粒、人間の体液に近い成分の生理食塩水、血流を良くすると言われている生薬エキスの三つの成分を別々に与えて、ラットの腸管に作った血栓を溶かす作用がどの程度かを比較したものである。この実験の方法は日本の筑波大学と鄭教授が共同で開発したもので、鄭教授は以前の日中瘀血シンポジウムでも血栓を溶かす作用が非常に強いといわれるアスピリン(これは日本でも解熱鎮痛薬としておなじみのもの)と冠元顆粒を比較した実験結果を報告している。
 実験はラットの腸の血管から非常に細い動脈を一本、顕微鏡を見ながら選び出し、ここに光線と色素の相互作用で、まず血栓を作る。この後、血液の流れが完全に止まったことを確かめ、三つの成分をそれぞれのラットに注射して、これらの成分が血栓を溶かす効果を一時間にわたって比較、観察したものである。

アスピリンより優れた血栓予防効果

図2 血栓モデル溶解実験

冠元顆粒750mg/kg(成人の1日量9g:3包に相当)を投与。
●血栓が溶け、流れは順調


生薬エキス135mg/kg(成人1日量1.5gに相当)を投与。
●血栓の一部が溶解している。


生理食塩水2ml/kgを投与。
●血栓は完全に詰まったまま

 この比較実験に関してもビデオが放映されたが、これは実に衝撃的な内容であった。(図2)  
 冠元顆粒を投与した場合は15分後から、一部の血液が少し動き始め、生理食塩水、生薬エキスでは変化が見られない。38分後、冠元顆粒を与えたラットでは血液の流れがますます順調になり、血栓の量も減り始め、血栓予防効果があるといわれる。生薬エキスではごく一部の血液がゆっくりと動き始めたが、生理食塩水では全く動かず、何の変化もあらわれない。  
 さらに51分後になると、冠元顆粒を与えたラットでは血液の流れが非常に速くなり、勢いも良くなってきたが、生薬エキスでは一時流れだした血液も、再びつまったまま。生理食塩水では血栓を溶かすことは全くなく、1時間近くにわたって血管がつまったままなので、血管のまわりの細胞が壊れ、血管の内皮細胞が壊死した状態が見られた。
 鄭教授は「この実験によって冠元顆粒に優れた血栓溶解作用があることが明らかになった」とし、冠元顆粒、アスピリン、生薬エキスを長期服用(10日間)した場合の血栓予防実験の結果をさらに詳しく報告した。実験の方法は生理食塩水、冠元顆粒の三つの異なる量、アスピリン、生薬エキスをそれぞれ10日間、ラットの口から与えるというもの。投与量は、冠元顆粒の低用量群は理論的には人間の大人1日量の4分の1、中用量群は常用量、高用量群は約3倍、アスピリンと生薬エキスはそれぞれ大人1日量と同量とした。
 この実験の結果は、冠元顆粒は
(1)中用、高用量群には血栓の形成を予防する作用が明らかに見られ、アスピリンには一定の作用が見られるが、冠元顆粒ほど明確ではなかった。
(2)冠元顆粒と生薬エキスには血管の内皮細胞の働きを保護する作用が見られた
などが明らかになった。