これだけはこころがけよう
  インフルエンザ&かぜ&新型インフルエンザ
    予防・撃退マニュアル

〜インフルエンザ予防が花粉症予防にも美肌にも効果〜

インフルエンザ

 ウイルスはマスクも通過する超微生物

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染によって広まる感染症です。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属し、粒子の直径は100万分の1mm前後、細菌の10分の1以下というほとんどのマスクを通過してしまう超微細な生物です。細菌はそれ自体独立した生物ですが、ウイルスは他の生きた細胞(宿主細胞)に侵入しそのタンパク合成系やエネルギー産生系などを使ってウイルス自身を複製するという寄生型です。
 日本の場合、12月に入ると流行しはじめ、1月から3月末までが最盛期で4月になると収束してきます。

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 ヒトや鳥、ブタなどに寄生

 A型インフルエンザウイルスの宿主となるのは、ヒト、多くの鳥類、ブタ、ウマ、アザラシ、クジラなどで、さらに、アジア型(H2N2),香港型(H3N2),ソ連型(H1NA)に分けられます。

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 咳、くしゃみから感染

 感染は、咳、くしゃみなどによって飛ぶ粒子の吸入による飛沫感染です。粒子はしばらく空気中を漂うので、人が集まる場所はすべて感染しやすい場所だといえます。高機能のマスクは細菌を防御するには有効ですが、前記したようにインフルエンザウイルスは微細なのでマスクによる防御は困難です。しかし、マスクは咳やくしゃみの勢いを減らせるので、他への感染を防ぐ効果があります。

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 超高速で増殖

 呼吸によって上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)の粘膜にとりついたウイルスは、その上皮細胞で6〜8時間後には100〜1000倍に、16時間後には1万個以上、24時間後には100万〜数千万個へと増殖しついには細胞が破壊されて他の細胞に取り付きます。この感染した細胞の周囲で炎症が生じ、ついで生体反応を介して全身症状が生じることになります。

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 1、2日の潜伏後、突然の高熱

 1、2日の潜伏期(ウイルス増殖期)のあと、突然の高熱(通常38℃以上)と全身倦怠感、関節痛や筋肉痛、のどの痛みや腫れを生じます。通常は3〜5日間寝込むような状態になりますが1週間程度で回復します。進行すると下気道に症状を引き起こしやすくなります。細菌も容易に肺に侵入しやすくなり、肺炎を引き起こします。

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 高齢者、慢性疾患患者、乳幼児、妊婦がハイリスク層

 高齢者、慢性疾患患者、乳幼児、妊婦などは、しばしば肺炎を併発し死亡する危険性が高くなります。重症化する可能性が健康成人の数百倍であり、インフルエンザによる犠牲者の90%以上は高齢者です。
 また、乳幼児が初感染したときの症状は重く、合併症により死亡や後遺症が残るような重症化が多くみられます。さらに近年はインフルエンザ脳症(高熱に続いて脳の機能の破綻から突然のけいれんや意識障害を起こす脳がダメージを受け、後遺症を残したり死亡することもある。罹患するのは5歳以下の子どもがほとんど)が多発しており問題になっています。

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 粘膜のバリア機能で防御

 この理由は、健康成人の場合は、気管支上皮で病原体を外へ排出するおびただしい数の繊毛細胞や、生体防御物質を含む粘液の分泌が宿主を病原体や異物から守るバリアとして働き、病原体や異物を上気道にとどめて下気道や肺に到達しにくくなっています。しかし、ハイリスク患者の場合、繊毛細胞の働きや粘液の分泌が悪いためにバリア機能が不十分で、上気道細胞が破壊され細菌とウイルスが下気道や肺に到達し肺炎を起こし、生体防御システムの破綻も一層大きくなって合併症も起こすと考えられています。

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 決定版といえる治療薬はない

 従来インフルエンザの特効薬はないとされてきましたが、現在では幾つかの治療薬が認可されています。それらは罹病期間を1〜2日短縮できる効果があるとされますが、下記のような問題点も指摘されており、全面的に薬に頼れる状況にはありません。
 【塩酸アマンタジン】
  ・A型に対してだけ発熱期間を1〜2日短縮する効果。
  ・催奇性が疑われるデータがあり妊娠中、授乳中は禁忌。
  ・こどもには使えない。
  ・発症後48時間以内に投与しなければ効果は少ない。
  ・長期服用は、副作用が心配される。
  ・投与の20〜30%に耐性ウイルスが発生する。このウイルスで発病した人にはアマンタジンが効かない。
  ・医療効果が認められるのは4〜5人に1人。
 【ノイラミニダーゼ阻害薬】吸入薬ザナミビル(商品名『リレンザ』)、経口薬リン酸オセルタミビル(商品名『タミフル』)
  ・A、B両型のインフルエンザに効くとされるが、同じA型でもソ連型には効いたが香港型には効かなかったという報告がある。
  ・発症後48時間以内に服用を開始すれば回復が1日くらい早くなる。
  ・ぜんそくの子を対象にしたデータでは、24時間以内に飲み始めるとおおむね回復が早かった。
  ・リン酸オセルタミビル服用で耐性ウイルス出現の報告がある
  ・服用の小児にインフルエンザ脳症多発が疑われる報告がある。
 【抗生物質】
  抗生物質はウイルスには効果がない。細菌感染を併発した場合に抗生物質を使用する。
 【解熱剤】
  解熱剤の服用はかえって病態を悪化させる場合がある。インフルエンザウイルスは熱に弱く、発熱は体がウイルスを攻撃するために熱を生じているためであるのに、強制的に解熱をすると炎症反応や免疫反応といったせいた生体防御反応も抑制してしまうためで、細菌やウイルスの活動を活発にしてしまうことになる。特に非ステロイド系抗炎症解熱剤はインフルエンザ脳症の原因としても疑われる強い副作用があるので使用はひかえたい。比較的安全な新薬はアセトアミノフェンだけだが使用量が適切でないと、熱を下げすぎてしまって回復が遅くなるおそれがある。またアルコールを一緒に飲むと肝臓障害を起こす危険性がある。
 【中医学(中国漢方)】
  直接インフルエンザウイルスを攻撃する作用がある漢方薬は知られていない。しかし、中医学で用いる生薬には抗ウイルスや抗細菌の免疫機能(マクロファージやIg抗体)を高めたり、ウイルスの攻撃によって恒常性を失った生体機能を正常化しようとする働きを助けるものがあり、理論に基づいて個人個人の状態に応じた対応がなされる。

左から「黄蓍」)、「金銀花」、「ホソバタイセイ(板藍根)」

  その代表的な生薬は補気薬の黄蓍であり、さらに、性熱解毒薬に分類される金銀花は生薬ながら抗生物質に似た抗細菌作用も持つという。金銀花は銀翹解毒片(商品名 天津感冒片)などの発熱型向け風邪薬に主薬として用いられることが多く、この処方は長く使われ続けていて定評がある。この他、板藍根も感染の予防によく用いられる。板藍根は一般的には、日常的な予防に単味でお茶として利用されている(日本では健康食品扱いで、板藍茶、板藍のど飴などの商品が市販されている)。中国でSARSが流行したとき、中国中の板藍根が流行地の上海や香港に集められ、各地で払底したというニュースも伝えられた。

板藍根が配合された「板藍のど飴」。すっきり感が拡がる。

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 予防法−インフルエンザワクチン

 インフルエンザを予防するもっとも効果的な手段はワクチンの事前投与による免疫の獲得です。しかし、現実には、ワクチンによる完全な予防は困難です。その理由は次のような点にあります。
 ・流行するウイルス株とワクチンの株が一致しているときには効果がありますが、インフルエンザウイルスは変異を起こしやすく、絶えず小さな変化を繰り返しているために流行する型に合ったウイルスを準備することは至難。これが、インフルエンザが予防処置として完全な手段ではなく、毎年インフルエンザが流行する最大の理由。
 ・インフルエンザウイルスの感染は上気道の粘膜に限られるのに、気道粘膜の免疫機能が長持ちしない。
 ・アナフィラキシー様症候群、ギラン・バレー症候群などの副作用報告がある。
 ・鳥由来のアレルギー(卵アレルギーなど)がある人にアレルギー症状が出るおそれあり。
 インフルエンザワクチンの接種によってウイルスに対する抗体ができるまでに約1ヵ月半かかる。流行期に入ってからの接種では間に合わない場合もある。
 以上のような問題がありますが、現在の厚労省の方針はインフルエンザワクチンの接種を促進させる方向になっています。しかし、依然としてインフルエンザワクチン接種に対する批判的意見もあります。
 ワクチン接種は、なるべく軽い病気を体験させておくという方法ですから、人によってはワクチンで本当に発症してしまうという事故が起こり得るわけです。そうした事故を防ぐためにも、接種を受ける場合でも次に述べるようなバリア・パワーを備えておく必要があります。そうした点をワクチンの予防接種を普及させる上でも並行してPRすべきでしょう。

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 予防法−バリア・パワーのアップ インフルエンザで倒れるわけにはいかない方へ

 現状ではインフルエンザワクチンを接種しても、それで予防対策が十分だとは言えません。網によって防御をしている状態に例えると、以前に比べてネットの編み目が少し小さくなったとか、防御する方向が以前より正確になったといえると思います。
 これは、ワクチン接種の普及が社会全体で考えると、インフルエンザ患者の総量を減らしたり社会機構上の防御態勢維持につながるかもしれませんが、個人個人にとってみれば、依然としてインフルエンザ感染の危険は去っていないといえます。
 この危険性を減少させるには、各個人の防御力(バリア・パワー)を高めることに尽きます。
 同じように感染する機会に遭遇しても、感染して発症する人と発症しない人がいます。その型のウイルスに対して免疫があれば当然発症しないのですが、免疫は同様でも発症する人としない人がいるのです。発症しない人は粘膜のバリア機能が充実しており、ウイルスを排出します。発症する人は粘膜のバリア機能が弱く、ウイルスに侵されると考えられます。
 現代医学は、ウイルスの特定そして攻撃方法の研究には進展を見せていますが、バリアを強化する対策については熱心ではないように思えます。
 一方で、中医学にはバリア・パワーをアップする(益衛気)医学理論があり、これはインフルエンザ予防(粘膜を介して侵襲を受けるかぜや花粉症などのアレルギーの予防にも)に役立ちます。特にバリア機能が弱い高齢者、慢性疾患患者、幼児、妊婦といったハイリスクとされる方々、インフルエンザで倒れることができない社会的立場の方々によく理解していただきたい理論です。

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 中医学のバリア・アップ作戦

 ヒトの生体反応を維持するにはエネルギー=気が働かなくてはなりません。体にはさまざまな種類の気がありますが、その中で、体の体表部を巡り、皮膚や粘膜で外からの異物や環境変化から体を防御する働き、すなわちバリアのような働きを「衛気(えき)」と云います。「体を衛(まも)る元気」という意味です。
 インフルエンザウイルスが取り付くのは、上気道の粘膜であり、粘膜に密生する繊毛(せんもう)の働きと粘膜に分泌する粘液がインフルエンザウイルスを排出しようと働いて健康を保とうとするわけですが、繊毛や粘液の生成や分泌をコントロールすることは衛気の大きな働きといってよいでしょう。元気に増やすことを「益(ま)す」といいますが、益衛気(衛気を益す)ことがウイルスや細菌から感染しにくくなることにつながります。  気は一種のエネルギーであり、その元となるものは食事と大気です。したがって、偏りのない栄養の摂取と吸収、及び十分な大気の取り込みが必要です。消化機能(中医学で「脾」)と呼吸機能(中医学で「肺」)の働きがよくなければなりません。さらに運搬する手段として血液も健康でなければなりません。何かが欠けているとそれは「未病」の状態であり、発症のおそれが生じることになります。その人の状態ごとに養生法はきめ細かく判定されるわけです。

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 バリア・アップ処方−玉屏風散

 気を養う生薬の中で、衛気を益す生薬の代表とされるのが「黄蓍」(おうぎ)です。この黄蓍を中心に、体表を引き締める防風(ぼうふう)と黄蓍の働きを効率的にする白朮(びゃくじゅつ)を加えた玉屏風散(商品名 衛益顆粒)が最もバリアパワーアップ効果に満ちた処方だと言えるでしょう。黄蓍については使いやすいうえに効果が確かであることから、黄蓍及び黄蓍を含んだ処方については多くの研究論文が発表されその効果を証明しています。その中からこの玉屏風散についての研究報告をこちらでご紹介しましょう。新薬にはない興味深い結果が現れています。
 「薬は病気を治療するもの」という考え方が一般的ですが、漢方薬には「病気を予防する働き」を持つ薬が珍しくありません。かえって治療効果より予防効果の方が評価される薬もたくさんありますが、玉屏風散も予防効果が優れた薬です。効果が出るまでには2週間程度の服用が必要のようです。

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花粉症にもアレルギーにも強くなる 衛気を強化する付随効果−1

喘息アレルギー、10年で倍 (喘息の子どもが10年で倍に増えたことを伝える平成17年12月9日付け読売新聞)

 衛気を高めると、インフルエンザウイルスに強くなるだけでなく、良い副作用と言って良いようなメリットがあります。衛気を強めるとウイルスや細菌だけでなくさまざまな異物の排出力も強化されることになります。また抗体制御システムもコントロールされるようになります。花粉、ダニ、ほこり、化学物質など、皮膚や粘膜を介して生じるアレルギーの抗原(アレルゲン)に強くなるわけです。
 高齢者にもこどもにもアレルギー性の喘息が増えています。最近の児童は体格はよくなっていますが、体力は低下していることが報告されています。喘息やアトピーをはじめとする児童のアレルギー患者は増加しています。一般的にアレルギーを発症しやすい体質の人は、かぜも引きやすいようです。衛気を高めることは、インフルエンザやかぜの予防だけでなく、花粉症やアトピー発症の予防にもなると考えられます。

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美肌効果も 衛気を強化する付随効果−2

 衛気が働けば皮膚や粘膜に血液や体液も巡るようになりますから、当然肌は潤いをもって瑞々しく、また引き締まってきます。本当の美とは、健康な身体、健康な肌に宿るものでしょう。これもちょっとうれしい漢方による良い副作用です。

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現代医学と中医学を併用してより完璧な予防を

 インフルエンザに対してワクチンも最新の薬も完全には対応しきれません。中医学の生薬でバリアをアップしてもそれだけではまだ完全とはいえません。しかし、そのヒトのケースに応じて、取れる手段はすべてとることが、強力なインフルエンザに罹る可能性を低くし、例え感染しても症状を軽くする最善の方策になるでしょう。
 まず基本的に誰にとっても大事なことは、日常的にバリア・パワーをアップさせ、ウイルスや細菌に強い体を用意しておくことです。その上で、年齢や生活条件、体調に合わせて必要ならばインフルエンザワクチンの接種を行うこと、もし発症したら休養を第一とし、病状に合わせて適当する薬を服用することです。

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