藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第42回】

頭痛持ち ストレスから肝の異常
機能を高め、精神を安定する「逍遥散」

 頭痛はありふれた症状には違いありませんが、そのメカニズムとなると、現代医学でも全容はつかみきれていないのが実情です。
 このやっかいな頭痛を中国漢方では、肩こり、頭重などとともに、未病(病気の前段階)状態で起こる一連の症状としてとらえています。そして、できるだけ根本から治そうとします。
 脳腫瘍(しゅよう)やクモ膜下出血などからくる頭痛は別にして、いわゆる頭痛持ちといわれるものの場合、中国漢方ではその原因を、内因性のものと外因性のものの二つに大別し、治療法も区別して考えます。
 カゼなどのように、外部の病原菌(外邪)や気温の変化によって起こる頭痛は外因性に分類され、葛根(かっこん)湯、中国感冒丸、天津感冒片などを症状にあわせて処方します。
 ここでは、もう一つの慢性的な頭痛について詳しく述べてみたいと思います。慢性的な頭痛は、大半が内因性のものです。
 ストレスがたまり、気分のイライラからくる、こめかみの部分から側頭部にかけての頭痛を、中国漢方では肝の異常、すなわち「肝鬱化火(かんうつかか)」ととらえています。
 肝は血液の貯蔵庫であリ、血液を介在して脳や目、筋肉などを養っています。この働きが停滞すると、血液の循環が悪くなり、精神の働きもスムーズにいかず、イライラや怒りっぽさとともに、全身症状の一つとして頭痛が現れます。この場合の頭痛は、肝の機能を高め、構神の安定をはかることが必要です。処方は、「逍遥散(しょうようさん)」もしくは「加味(かみ)逍遥散」を用います。
 中国漢方では、血行が停滞し、身体に害をおよぼすようになった血液を「お血(おけつ)と呼んでいます。このお血も頭痛の原因になります。重症者では、嘔吐(おうと)、動悸(どうき)、不眠などを伴うこともあります。この場合の痛みは、かなり頑固なものが多く、治療も時間がかかります。血行改善と血液浄化すなわち「活血化お(かっけつけお)で治療します。「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」が効果的です。
 血液と同じように、水分の停滞(痰=たん=疾)も頭痛の引き金となることがあります。
 胃腸系の弱い人は、胃や腸に余分な水分がたまりがちです。疲れたときにしばしば頭痛や、むかつき、吐き気などを訴えます。治療法としては、身体の余分な水分を排泄し、頭痛を止める処方を用います。「六君子湯合呉茱萸湯(りっくんしとうごうごしゅゆとう)」の適応です。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)