藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第39回】

元気がない時に気の力補う
四君子湯ベースにした名薬

 まだまだ老けこむ年でもないのに、どうも疲れやすく元気がない。全身のけん怠感、無力感、息切れ、汗をかきやすい…。こんな状態を中国漢方では気の力の不足、生命力の低下、すなわち気虚といいます。
 東洋医学への関心が高まるなかで、「気」の概念も少しずつ理解されるようになりました。生命を支える要素として、気・血・津液の三つの要素を重視することはこれまでにも述べました。人体は、気・血・津液の調和によって健康が保たれているとするのが、病気を全身的にとらえようとする中国漢方の考え方です。
 気の力が弱くなったときには、気を補う必要があります。これを中国漢方では「補気(ほき)」と呼び、病気の重要な治療法の一つとしています。
 気は生命を維持していく上で、次の五つの働きを担っているとされます。
   
1.推動作用…体全体の生理作用をドライブしていく働きです。気虚になると、元気がなくなります。
2.温煦(おんく)作用…体を温める働きです。気が不足すると体は冷えてきます。
3.防御作用…外から侵入しようとする病気の原因、外邪を駆逐する働きです。気が不足するとカゼなどをひきやすくなります。
4.固摂作用…汗・便・血液などが体外に漏れ出すのを防ぐ働きです。気が不足すると、多汗や失禁などの症状が現れやすくなります。
5.気化作用…血・津液など他の物質に変化を起こさせたり、血・津液との相互作用を促進します。気が不足すると、血も不足します。

 以上の作用からも分かるように、気は人体にとって重要な役割を担っています。そこで古人は、気を補うクスリの開発にも熱心に取り組み、全身状態に合わせてさまざまな補気薬を調合してきました。
 その基本方剤の一つに「四君子湯(しくんしとう)」があります。人参、白朮、茯苓、甘草の四つの生薬から成る四君子湯は、単独で使われることは少なく、気虚のタイプに合わせてさまざまの生薬をプラスアルファしながら服用します。
 なかでも消化吸収力が低下した脾胃の気虚に効果のある「香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)」、循環器と意識の力が不足して疲労けん怠感の強い心気虚に欠くことのできない「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」、その二つが合併した心脾両虚タイプで睡眠などにも影響が及んだものに効く「帰脾湯(きひとう)」などは、サラリーマンにとっても価値あるクスリといえます。いずれも四君子湯をべースにした名薬です。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)