藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第38回】

10人に7人は脳梗塞の兆候
予防には「活血化お」が効果

 近年は、MRIやMRA装置のような先端医療機器の発達によって、シャープでキメ細かな体内画像が手に入るようになりました。
 こうした機器で脳の断層撮影、血管撮影を行っている京都蘇生会総合病院で、ちよっとショッキングなデータが発表されました。同病院が開設している脳の人間ドック受診者の結果を総合してみると、千人に対して何と七百人もの高率で脳梗塞(こうそく)の兆候が見つかるというものです。
 受診者の年齢も高齢の方だけでなく、40代、50代の働き盛りが多数を占めています。
 もちろん最新の機器はどんな小さな梗塞も見逃さないため、七割の人すべてが脳卒中予備軍とは呼べないにしても、ちよっと驚くべき数字ではあります。自分は大丈夫だと自信をもっている人も、安心はできないということです。
 約2000年前に著されたという東洋医学の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」では、脳卒中を“撃仆偏枯(げきふヘんこ)”と呼んでいます。撃仆とは突然の卒倒、偏枯は半身不随のことです。
 以来、脳卒中のように死亡率の非常に高い病気は日ごろの予防こそ大切だとし、各時代の名医によって予防法が述べられてきました。その中から、清代の名医・王清任が「医林改錯(いリんかいさく)」にまとめた“脳卒中の兆候31ヵ条”を抜粋して紹介してみましよう。
 1. 一時、眩暈(めまい)する
 2. 頭が一時、重い
 3. 耳鳴りがする
 4. 下のまぶたがけいれんする
 5. 上唇がけいれんする
 6. 目の前に竜巻を見ているようになる
 7. よだれが出る
 8. 突然の記憶力減退
 9. 手のふるえ
10. 頭・首すじが異常にこわばる
11. 手足のしびれ
12. 両足がぐらぐらする
13. 動悸(どうき)・息切れ
14. 目が理由なく一点を凝視する

…などが要注意の赤信号というわけです。
「脳卒中の兆しある者は、3年以内に暴病になる」という明代の名医・張三錫の指摘もあリます。
 この暴病とは、もちろん撃仆偏枯のことです。中国漢方には、血液の流れをよくしたり、血栓を除く「活血化お(かっけつかお)」という予防と治療の方法があります。
 前回ふれた心臓病とともに、脳卒中、脳血栓、脳梗塞などの脳血管障害の予防には、ドロドロになった血液をサラサラに変え、スムーズに流れるようにする活血化おが効果を発揮します。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)