藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第37回】

中西医結合の集大成
「冠心号方」で循環改善

 ショートホール、パー3。第1打がピンそば約1.5mにナイスオン。絶好のバーディーチャンス…。
 そんなパットに入った瞬間、グリーン上で大トラブルに見舞われる中高年ゴルファーが増えています。
 狭心症や心筋梗塞(こうそく)といった心臓病です。アマチュア・ゴルファーにとって望外のバーディーチャンスが、大きなプレッシャーとなって心臓を直撃するわけです。
 中国漢方で心臓病の予防・治療薬としてよく知られているクスリに「冠心号方(かんしんにごうほう)」があります。
 これは北京・中医研究院西苑医院の医師が中心となって、中国の伝統医学を見なおす研究の中から生まれた処方です。その成果は中国の「新医薬学雑誌」第8号(1978年)で発表され、当時大きな反響を巻き起こしました。
 中国最古の医書で、約二千年前に書かれた「黄帝内経」には、心臓病----心筋梗塞について多くの記述があります。真心(しんしん)病とか厥心(けっしん)病と呼び、治療方法についても述べています。
 この記述を裏付けたのが中国湖南省長沙市郊外で掘りだされた、約二千百年前の馬王堆古墳でした。副葬品として心臓病のクスリが大量に出土したのです。
 心臓病の治療に対して長い伝統を誇る中国漢方ですが、「冠心号方」は、それに西洋医学の考え方を取り入れた中西医結合の集大成として生まれた処方です。
 その効能は、少し専門的になりますが血栓形成の予防と溶解促進、冠状動脈の循環改善などが主なものです。
 このクスリは五つの生薬(丹参・赤芍・川きゅう・降香・紅花)で構成されています。狭心症や心筋梗塞は、冠状動脈の硬化、血栓による梗塞などが原因となって起こることが西洋医学の立湯から解明され、これに対する中国漢方独特の治療法---血の流れをサラサラにして血行障害を取りのぞく「活血化お(かっけつかお)」が選択された結果、この方剤にたどりついたわけです。
 中国では、この冠心号方は煎薬だけでなく、注射剤や錠剤としても広く使用されています。
 また、この処方の基本となる四種の生薬、すなわち丹参、赤芍、川きゅう、紅花の加減処方が活血化お薬として数多く製剤化されておリ、その一つの「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」が中国から輸入されています。
 心臓病・脳卒中の危機から自分を守るために大切なのは、冠状動脈の硬化を予防すること、つまり老化を予防することです。
 活血化お薬に、抗老作用をもつ補腎薬を併用するとともに、養生にも心がけましよう。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)