藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第34回】

「人参精」に速効性
気虚には補気薬が最適

 高血圧症ほど問題視されませんが低血圧症も当人にとっては、なかなかやっかいなものです。
 朝が弱く、エンジンのかかりが遅い。満員電車にゆられて、やっとの思いで出社はしたものの、早くもバテぎみ。めまいや頭痛を訴える日も多い。
 「ヤル気の問題だよ!」という上司のボヤキもわからないではありませんが、最高血圧100〜110以下という数値は、企業戦士としては大きなハンディといわねばなりません。
 低血圧症にも、他の病気が引き金となって起こる症候性低血圧症と、とりわけ原因となる病気の見つからない、体質的な本態性低血圧症の二つがあります。症候性低血圧症の場合には、その病因を取り除くことで解決に向かいます。しかし、本態性低血圧症は病気ともいえない体質的なものだけに、かえってやっかいだともいえます。
 元気がない、疲れやすい、根気がない、顔色がさえない、といった一連の症候群は、中国漢方でいう「気虚」の状態といえます。
 虚とは不足とか衰弱をあらわす言葉です。原因がはっきりしない本態性低血圧症のうち、中国漢方からみてエネルギー不足、機能不足といえる「気虚」には補気薬類を用いるのが最適です。
 補気薬の代表は、漢方の王様ともいえる朝鮮人参(オタネニンジン)です。わが国でも、昔から衰弱した病人を救う特効薬として知られていました。
 午前中はほとんど寝たきりという、かなり重症の低血圧症に悩む人が、朝鮮人参のエキスを保健薬として連用することで、バリバリ仕事ができるようになった例はたくさんあります。
 ただし朝鮮人参といっても、値段はピンからキリまであり、産地によって効能にもかなりの差があります。
 中国で人参の産地としてよく知られるのは吉林省で、吉林産の人参は高貴薬として珍重されています。
 この吉林人参の有効成分を抽出したエキス剤「人参精(にんじんせい)」が中国から輸入されており、わが国でも入手できます。このエキス剤は吸収がよく、速効性があり、就寝前に服用すれば、翌朝の不快感がスッキリとれます。ただし、人参は血圧の高い人やお茶を飲むと眠れなくなる人には向きませんので注意してください。
 低血圧症では、胃腸障害をともなう人が少なくありません。この場合には、以前紹介した「六君子湯(りっくんしとう)」「香砂(こうしゃ)六君子湯」、胃下垂ぎみの人には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の併用が効果を上げます。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)
※次回は9月20日更新