藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第24回】

体の弱点を知る代表格は
朝鮮人参


前は「へそから下の妙薬」というイメージがありました。
 今でもその傾向はなくはありません。世界には数多くのクスリがありますが、老化に抵抗し衰弱を防ぐ、いわゆる「強壮・強精剤」の分野では、中国は他に類をみない一大宝庫といえます。今回は、それら強壮・強精剤の特長を見ていくことにしましよう。
 一定の疾病に対する冶療薬に対して、滋養強壮作用のあるクスリを、中国漢方では補益薬(ほえきやく)と呼んでいます。
 この補益薬は、効きめにそれぞれ特長があって、大きく「補気薬」「補血薬」「養陰薬」「助陽薬」の四ブロックに分けることができます。
 スタミナに自信が持てなくなったが、強壮・強精薬なら何でもいいかというと、それは個人の「証」によってクスリを選ぶ中国漢方の考え方からいえば「ノ−」と言わざるをえません。自分の体の弱点をよく確かめ、必要なクスリを適宜組み合わせて用いることが大切です。
 まず内臓の働きを助け、体力をつけるクスリとして「補気薬」があります。気とは機能、働きのこと。胃の働きは胃気といいます。
 補気薬の代表格が朝鮮人参です。粉末やエキス剤が数多く出まわっています。
 この朝鮮人参を主薬に、複数の生薬を加えて、さまざまな処方が作り出されてきました。腹痛で冷えるものに効く「人参湯」、胃弱で体力不足向けの「六君子湯」などがその一例です。
 朝鮮人参は、若い人やのぼせ気味の人が多量に服用すると、鼻血や眠りにくくなるなどの副作用が出る場合もあり注意が必要です。
 二つめは「補血薬」です。文字通り増血して体力をつけるクスリです。何首烏(かしゆう)、当帰などが代表的な生薬です。
 当帰は増血作用に優れ、古い処方で「当帰芍薬散」がよく知られ、近年中国製剤として「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」が輸入されています。当帰は温める作用が強いため、のぼせ症で、手足のあたたかい人には向きません。
 また、何首烏にも増血作用があり、長期の服用によって、血液の一部とされる毛髪(血餘=けつよ)を黒くし、白髪や脱毛予防にも効果をあらわします。漢方薬局に行けば生薬として入手でき、中国製剤としては「首烏延寿片」が輸入されています。
 体液を増し、体力をつけるクスリ「嚢養薬」と、性的な能カアップのためのクスリ「助陽薬」については次回で。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)