藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第22回】

慢性の便秘タイプ別に
処方を選択


 慢性の便秘に悩んでいるサラリーマンは意外に多いものです。消化器内科で精密検査をしても、大腸に特別な異常は見あたらず、下剤を渡されるケースが一般的です。なかには会社の同僚や友達に「いいクスリだから」とすすめられて、市販の便秘薬を服用したにもかかわらず、さっぱり効果がみられないという困ったケースもよく耳にします。
 あなたは便通の異常をワンパターンに考えすぎていませんか? 東洋医学では、なぜ便秘になったのか、どういうタイプの便秘なのかをまず考えます。そして、便秘という一つの症状に目を向けるだけでなく、他の全身的自覚症状や他覚症状から総合的に判断し、体質改善による根本治療を目指します。
 中国漢方では、便秘を起こす原因によって、次のようなタイプに大別します。
1.熱性便秘…大腸内が熱状態となり、便は硬く乾燥ぎみ、 全身のほてり感、口渇、口臭などを伴うこともある。腸の熱をとり、乾燥を防ぐことで便通をうながす代表的な方剤としては麻子仁丸(ましにんがん)があります。

2.燥性便秘…老化や衰弱によって身体の水分が少なくなり、熱っぽくなリ、腸管や便通に異常が現れるもの。動悸、めまい、ロ渇などを伴うことも多い。

 1.の型は栄養過剰(実証)による乾燥、2.の型は栄養不足(虚証)による乾燥で、便秘の性質や原因は正反対。したがって治し方も違います。滋養剤で身体に潤いを与え、便の排せつをうながす方剤としては潤腸湯(じゅんちょうとう)があり、中成薬(中国製剤)としては首烏延寿片(しゅうえんじゅへん)がよく使用されます。
3.気滞性便秘…精神的ストレスがたまり、腹部の張満感が強い。ストレス、肝への負担、胃腸の機能障害、便秘、というメカニズムが考えられる。緊張を解き、気分をリラックスさせるためにも、肝臓の働きを強めることが根本治療となります。方剤としては六麿湯(ろくまとう)がよく知られています。中成薬では開気丸(かいきがん)や逍遥散(しょうようさん)の適応です。ストレスで便秘と下痢が交互に現れる、過敏性大腸症候群にも効果を発揮します。

4.気虚性便秘…排せつ力が弱く、消化能力の低下、全身の倦怠感などの症状を伴い、老人や胃腸の弱い人によく見かける。麻子仁丸で便通をうながすとともに、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)で胃腸の働きを強めることが必要。
 ひとくちに便秘といっても、中国漢方ではさまざまなクスリを使い分けることがおわかりいただけると思います。

(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)