藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第16回】

ダイエット効果がいまひとつない時は
新陳代謝を高めるクスリでサポートを


 ビジネスマンにとって、肥満は出世のハンディになると思いますか? 「知性と体力、それにガッツだよ!」と言いたいところですが、答えは少し違うようです。「条件になる」とか、「いくらか影響するかも」といった肯定的な答えが、既に過半数を超えているのが現実です。
 海の向こうアメリカでは、もっとシビアです。自分の体重すらコントロールできない人に、重要な仕事の管理ができるはずがない。これがアメリカのビジネス社会における、一般的な考え方だとか。何事もアメリカにならえの日本だけに、おなかのせり出した日本のサラリーマン諸氏もうかうかできません。
 そこで、今回は中国漢方による体重管理術。肥満の対症療法を紹介しましょう。肥満は、つまるところ摂取エネルギ−が体の消費エネルギーより多いということです。過食に注意し、適度な運動を心がける。肥満対策の第一歩はやはりここにあります。それを踏まえたうえで、各人にあった処方を考えていくことになります。
 たくさん食べないと満足しない人の場合、原因は胃のうっ血からくる熱です。胃の余分な熱を取り除くためには、冷たい性質のクスリを用いなければなりません。黄連(おうれん)や黄柏(おうばく)を中心とした「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」が有効です。
 食べる量はそれほどでもないのに、なぜか太るという人もいます。いわゆる水太りといわれるタイプです。古人の観察によると、「肥人は、身体に湿(水)がたまりやすく、気虚の人が多い」とされています。気虚というのは、機能の衰弱のことで、新陳代謝の低下を意味します。この場合には、機能の改善をはかり、体のエネルギー代謝を高めることが決め手となります。治療法は、「香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)」「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」「平胃散(へいいさん)」などを使い分け、胃腸の働きをよくすることで基礎代謝(眠っていても消費するエネルギー)量を高めます。
 ストレスで過食症におちいる人もよく見かけます。イライラのはけ口を、過食に求めるというものです。中国漢方には「肝は思考をつかさどる」という経験則があります。肝の働きが低下すると、血流が悪くなり、脳の活動も弱まって、イライラし怒りっぽくなってきます。このタイプの人には、肝機能を改善し、精神をのびやかにする作用をもった「抑肝散(よくかんさん)」「逍遥散(しょうようさん)」などの服用をすすめます。
 肥満解消の基本は、腹八分の食事と適度な運動です。さらに効果を高めるために、漢方療法があるということです。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)