藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第14回】

家庭の常備カゼ薬は
2タイプを用意して即対応!


 中国漢方には「同病異治」という言葉があります。
 同じ病気でも、その原因となる証が異なれば、その証に合わせてさまざまな治療法を用いるという考え方です。一番身近な病気、カゼの場合も例外ではありません。
 日本の漢方でカゼといえば、クスリは「葛根湯(かっこんとう)」が代表的です。ところがこのクスリを、オールマイティーのように振りかざすのはいかがなものでしょう。
 カゼのひきはじめ、つまり初期症状は大きく2つに分かれます。
 ゾクゾクと寒気を感じるものと、寒気よりもむしろ熱っぽさを感じるものの2つです。前者は頭痛や鼻水、関節や筋肉の痛みを伴うことが多く、後者はノドの渇きやノドの痛みを伴い、流行性感冒に多くみられます。
 この2つのタイプで、方剤を使いわけるのが中国漢方。
 寒気の強い方(悪寒型)は、体を温め、発汗をうながせば快方に向かいます。このタイプは葛根湯の適応です。
 ところが、熱のある(熱感型)カゼは、熱をさますことが治療の第一歩です。体を温める作用の強い葛根湯では、逆効果になりかねません。代表的な方剤としては「銀翹散(ぎんぎょうさん)」があります。
 ここに含まれる生薬の金銀花、連翹(れんぎょう)には抗菌・抗ウイルス作用があり、ウイルス性感冒にも対処できます。
 一般的に、摸方薬は効きめが緩やかだという印象があります。たしかに、天然の生薬を使った漢方薬は、西洋薬に比べて副作用が少なく、作用もやわらかです。しかし、そうだからといって速効性がないとするのは間違いです。カゼのような急性病にたいしては、漢方も西洋薬に負けず劣らずの速やかな効果をひきだすことが可能です。
 カゼかなと思った、ひきはじめの段階で、どちらのタイプかを見極め、クスリの使いわけを的確に行うことが、中国漢方におけるカゼ治療のコツとなります。
 家庭常備薬としては「葛根湯」、「銀翹散(ぎんようさん)」、を改良して錠剤化した「天津感冒片」の2タイプをおけばほぼ対処できますが、初期症状を見逃し症状の重くなったものや、肺炎に移行することもあるお年寄りのカゼには、もっと細かい処方が必要です。この場合には専門家に相談するのが賢明でしょう。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)