藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第13回】

腎虚から腰痛に
漢方薬にも腰痛向きのクスリが


「ナイスショット!」
 ゴルフ愛好家にとっては、まさにストレス解消のひと振りといったところです。
 ところが、このところ中年の初級ゴルファーに、ギックリ腰ならぬ、ゴルフ腰というやっかいな腰痛が増えていることをご存じですか。まだまだ若い者には負けられないと、ロングホールでのフルスイングはいいのですが、気力に肝腎の体力がついてきてくれません。ゴルフ特有の捻りの筋力運動に、骨盤が悲鳴をあげた状態がゴルフ腰です。
 ひとくちに腰痛といっても、軽症のものから重症のものまでさまざま。西洋医学のワンパターンな消炎鎮痛剤投与に比べると、中国漢方には証(症状)によって、数多くのクスリがあります。痛みの性質を考えて、適応するクスリを服用すれば、大半の腰痛は治すことができます。
 中国漢方における腰痛のとらえ方ですが、腰は腎の府(容器)と、古人はいっています。腎は水分の調節だけでなく、発育や生殖をもつかさどる大事な臓器であり、その腎は腰に納まっているというわけです。
 腎の衰え、すなわち「腎虚」が、中国漢方の重要な理論体系の一つであることは、これまでにもくり返し述べてきたとおりです。腰痛には多くの場合、この腎虚が関係しています。腎が弱くなると腰も弱り、また、その逆も起こります。
 腰痛がはじまり、ギックリ腰をくり返すようになるのは、腎がパワーダウンしてくる40代以降。そのため腰痛やギックリ腰の治療には、腎虚を改善する補腎薬が効果をあらわします。
 漢方薬では、冷やすとかえって痛みの増す腰痛には活絡丹(かつらくたん)、体力のない虚弱者むきの独活寄生湯(どっかつきせいとう)、患部が重く痛み、浮腫や水がたまる夕イプむきの意似仁湯(よくいにんとう)などがよく知られています。適応する方剤にめぐりあえば、整形外科で思ったほど治療効果のあがらなかった腰痛にも効きます。ただし、老化現象によらない腰痛では、がんや腎臓結石によるものがあります。注意してください。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)